私も気づけばIT業界に10数年身を置いています。
IT業界は実に様々な会社があり、入れ替わりが激しい業界です。将来性は高いものの企業間の統廃合も多く、現在ある会社が10年後存在しているかも分からない業界です。
とはいえ、人材流動性が高いこともこの業界の特徴で、転職しやすい業界の一つと言えるでしょう。
今回は、そんなIT業界の中でもシステムインテグレーター(SIerと表記されることが多いです)について見てみたいと思います。
この記事で分かることはこんなことです
SI(システムインテグレーター)業界の分類
ユーザー系、メーカー系、商社系、独立系というカテゴリ
SI業界は一般的に、『ユーザー系』『メーカー系』『商社系』『独立系』という大きく4つのカテゴリに分類されることが多いです。
ユーザー系はメーカー系と同一視されることがあります。
各カテゴリの代表的な企業はこのような企業が存在します。
NTTデータ、野村総合研究所(NRI)、日鉄ソリューションズ(NSSOL) など
もともとは、別事業を行っている親会社がいて、親会社のIT部門が独立してできた会社が多いです。
上記に記載した一部大企業を除くと、殆どのユーザー系SIerは親会社向けのビジネスがメインである会社が多いです。
親子資本関係がある為、親会社からの出向者も多いです。
NECソリューションイノベータ、富士通エフアイピー など
親会社にメーカーを持つ会社がこのカテゴリに分類されます。
NEC〇〇、富士通〇〇、パナソニック〇〇、などの会社名が多いです。
親会社の共同で大規模ビジネスを提案することもあります。その場合は親会社が元受けとなるケースが多いです。
メーカー色が強いため、提案できるサービスや製品に制限が掛かることもありますが、今後はその傾向は薄くなっていくと思われます。
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、SCSK、日本ユニシス など
その名の通り、商社系のIT部門が独立してできた会社です。
海外商圏に強みがあったり、親会社がグローバル企業であれば海外に拠点がある企業もあります。
ユーザー系やメーカー系と同様、親会社からの出向者が多いことも特徴です。
TIS、ネットワンシステムズ(NOS)、大塚商会 など
上記と違い親会社の資本関係がない、独立したシステムインテグレータです。
大塚商会をSIベンダとするかという議論は以前からありますが、最近はこのようにカテゴライズされることが多いです。
ソフトウェア開発業務がメインの企業群が比較的多い気がします。
企業規模はNTTデータがダントツのナンバーワン
業界で代表的な企業についてご紹介しましたが、企業規模でいうとNTTデータが日本でダントツのSIベンダとなります。(年商2兆円以上)
NTTデータを筆頭に、5,000億円以上の企業(大塚商会、野村総合研究所)、3,000億円以上の企業(CTC、TIS、SCSK)が続きます。
これらに挙がっている大企業は海外にも拠点があり事業を展開しています。
しかし、NTTデータ以外で真に海外事業を展開できている会社はないと言えます。
海外拠点や事業会社があっても、その多くは日本国内向けをターゲットしたものであり、現地法人をメインターゲットに大きく事業展開できてはいないです。
つまり、日本のSI業界は『日本国内マーケット』が主戦場の会社がほとんどだという事です。
SIerの事業内容について
主力事業はシステム開発
基本的な業務内容は『システムの開発』です。
SIerの強みは、様々なシステムを組み合わせて(インテグレーション)新たなITシステムを構築することができることにあります。
顧客の要望を正確に捕らえ、利用しやすいシステムを開発することにこそSIerの強みがありました。
クラウド化、外資系の進出により事業は変化
これまではその強みを活かして事業展開ができていたのですが、時代の流れとともにSIerの生き残り戦略も変化してきています。
ここ数年での大きな変化で、世間一般的に認知されている言葉としては、やはり『クラウド』です。
クラウド化により、これまでITシステムはオーダーメイド方式からサービス利用方式に大きく転換してきています。
そして、サービス化に伴い以前に増して外資系ベンダが日本国内のマーケットを席捲するようになりました。
従来SIerはこの『オーダーメイド』ビジネスがコアな収益源でした。
オーダーメイドシステムを開発するためにたくさんの社員を抱えたり、ゼネコンのような深い下請け階層構造が存在しました。
現在SIerには大きな事業転換の圧力が掛かっており、各社さまざまな施策を打ち出していますが時代の流れに先行している企業は残念ながらあまりないと感じます。
今後のSIerの未来は?
私の見立てで結論から申し上げますと、
なくなりはしないが大きく成長することもない
厳しい表現ですが、こう感じています。
しかし、他業界も大して変わらないです。
そして、このように考える理由は大きく2つあります。
①グローバル化の波に逆らえない
②システム開発ビジネスは先細りする
内容を説明します。
ITは以前に比べてかなりコモディティ化(汎用化)されました。
ITは資産として所有するものでなく、サービスとして利用するものになりました。
例えばGoogleやAmazonなどの外資系企業の年間の研究開発費用は、日本企業のそれとは比べ物になりません。
2ケタ、下手したら3ケタ位は違うと思います
そんな莫大な費用を投資して開発を続ける企業に、日本のIT企業に勝ち目はほぼないと私は考えています。
そんな外資系企業のサービスがますます日本にも流入してくることになるのです。
以上が一つ目の大きな理由です。2つめの理由はこのようなものです。
これからもITのサービス化は加速するため、顧客ごとにオリジナルのシステムを開発したりカスタマイズする案件は確実に減少します。
絶対に止めてはならないシステム(代表的な例でいうと、銀行のATMや決済システム、株取引システムなど)については個別のシステム開発や特殊な設計をされることはしばらく続くと思います。
しかし、それ以外のシステムの利用は個別開発をするニーズは減少していきます。
現時点ですでにそういう状況です。
また、システムの開発は自動化されたり、AIが(もしくはAIで)開発する時代に突入します。
もうそこに人間が入る余地がどんどんなくなってきています。
SIerは今後どうしていけばいいのか?
悲観的な記事になっていますが、SIerが日本国内からなくなることはしばらくはないと思います。
大手企業群は生き残る可能性が高いですが、業態の偏向は余儀なくされると思います。
私が考える生き残るための方針は、以下の2つのポイントです。
①グローバルなサービスとも連携しつつ事業展開する
②SIerからServicer(サービサー)へ業種転換する
まとめると、SIer(システムインテグレーター)であることを捨てるという事です。
まず、一つ目のグローバルサービスというのは、外資系企業のサービスを指しています。
世界中で利用されているスタンダードなサービスは、SIerも利用・販売した方がいいです。
対抗するのではなく、共存することが得策だと思います。
そして、日本企業のことは日本企業が一番詳しいです。
SIerとして従来顧客の業務をしっかり理解しているその強みを活かして、様々なサービスを組み合わせて顧客とビジネスをするべきだと思います。
また、二つ目にシステム開発をメイン業務とすることをいち早く脱却するべきだと思います。
ITのサービス化はどんどん加速しますが、ではサービスを買えばすぐ使えて運用に乗せられるかというとそこは別のレベルの話です。
特にグローバル展開している日本の大企業などであれば、そう簡単にはサービス導入で全てが一発で解決することはないです。
そこにSIerの勝機(商機)があります。
SIerがグローバルなサービスを組み合わせて、日本企業の顧客にサービスを展開するのです。
顧客の業務をよく理解しているという点は大きなアドバンテージであり、そこを利用するべきだと考えます。
つまり、SIerからサービス屋に事業転換を進めるべきだと考えます。
以上が私が考える日本のSIerの将来についてです。
今回は海外展開に関する視点は省略して記事にしています。
IT業界(SIer)の仕事内容や将来性 まとめ
ということでSIer(システムインテグレータ)に関する内容をまとめてみました。
本当はまだまだ書くことができるのですが、あまりにもマニアックになるのを避けるためこのくらいにしておきます(笑)
本記事の内容・考察は筆者(チキ)オリジナルのものであります。
人により見解の相違があるため、その点ご留意頂くとともに苦情や質問は本ブログのコメント欄では受け付けないことをご理解下さい。
他にもこのような記事も書いています。
ということで、今回のまとめです。
・クラウド、外資系進出などで市場は大きく変化しています
・サービス展開を事業の主軸にしていくことにSIerの勝機があります
コメント