筆者の初めての社会人経験は、超絶ブラック企業
前回の記事の続きです。
2004年当時、インターネットベンチャー企業バブル全盛期の時代ーーー
私が入社したのは、20代でぶっちぎって1,000万円稼ごうぜという謳い文句のインターネットベンチャー企業でした。
初めての社会人経験がそこから始まりますが、そこは戦場のような場所でした。
超絶ブラック企業の営業活動方針
どこにでもある顧客管理ソフトを300万円で売って、売って、売りさばけ!
前回の記事で詳しく説明していますが、筆者の所属した部署はホームページでインターネット通販システムを構築するサービスをメインにしていました。
しかし、ホームページの作成は20万円程度しかかかりません。
実際は顧客管理システムの言う名の単なる管理ソフト(DVD-ROM1枚)を5年間総額300万円でリース契約させるというものでした。
利益率は、驚きの80%超!
リース契約なので、契約翌月にリース会社から現金が入金される仕組みであり、キャッシュフローも潤沢になります。
営業ノルマ必達、未達の社員は人間扱いしてもらえない!
超高額な営業ノルマが課され、未達の社員はひどく罵倒されます。
契約をとってもとっても終わらない。社内にいるアポインターと呼ばれる電話営業社員は一日中電話です。
電話と耳がくっついてしまいそうなくらい、電話をかけさせられます。
そんなブラック企業の日々の営業活動の実態を見てみましょう。
一日の始まりは、『お疲れっす!』の大声から
始業時間は9時からですが、大体8時には出社しています。
朝一番の始まりの挨拶は、支店長の『お疲れっす!』の大声から始まります。
各チームの本日のノルマ、意気込みを(いやでも)宣言させられます。
宣言通りにいかなかった場合は、お仕置きが待っています。各人朝一番から大声で目標を叫ばされ、今考えるとそれだけで苦痛です。
テレアポ(電話営業)開始!
電話帳片手に、電話をかけまくる!!!
会社の机には分厚い電話帳やら、雑誌やらが散乱しています。そう、日々のテレアポに使うためです。
今時PCはないのかよ!という感じですが、全員にPCは貸与されていません。初めは必ず電話帳をベースにアポを取らされるのです。
アポが取れるようになってきたら、PCを貸与してもらえる場合もありますが、通常は2~3か月かかります。
対象となる電話アプローチ先は、食品業、アパレル、本屋など、小売りをやっているところであればどこでも対象でした。
しかし、大手はNG。ただでさえ怪しい会社なので相手にしてもらえないというのと商談に時間が掛かりすぎるからダメなのだそうです。
つまり、インターネットやビジネスに疎い個人経営者に甘い言葉をかけて契約させるというのが常套手段でした。
ここまで書くだけでも心が痛いです・・・
だから、個人的には最大限弊社のサービスを活用してインターネット通販の売上が上がるように提案していました。
TEL件数1日200~300件なんて当たり前
フロアには超怖いマネージャーがいました。
体形が北斗の拳のあるキャラクターに似ていたので、チームメンバは陰で彼の事を『ハート様』と(尊敬の念を込めて)呼んでいました。絶対に本人には聞かれないように・・・
(数字を達成しているときは優しかったです・・・)
電話帳も何百週もしているため、お客様からすぐに切られることも当たり前です。一日のTEL件数は200件とか300件とかは当たり前でした。
どれだけ、鉄の心を持ちながら上司とお客様の罵声に耐え、石の中から宝石を拾えるかというような仕事でした。
因みにこのテレアポは新入社員は等しく通過しないといけない仕事であり、もっとも地味で最も辛いのがこのテレアポでした。
アポが取れない社員はどうなるか・・・
今では考えられえませんが、当時は会社のフロアの中でタバコが吸えていました。
午前中のアポ件数の目標が達成できないことがうっすら分かってくると、現場はピリピリとした空気に包まれます。
マネージャー(ハート様)の機嫌が悪くなるからです。
アポイントの取れていない社員は、椅子を取られます。その日は立って電話をし続けることになります。
この行為を社内では、
立ちアポ
と呼ばれていました。
まぁ、半数以上アポイントのノルマが目標に届かないので、大体午後以降は全員立ちアポです。
一人アポが取れていて座って電話し続けるのも気が引けます。こういうところの連帯意識は良くも悪くもありましたね・・・
大体いつもお昼くらいにはマネージャーの機嫌が悪くなるので、怒声が飛び始めます。
マネージャーが怖すぎて震える社員もいました。
そりゃあ、横を通るたびに机を蹴られ、椅子を弾き飛ばされ、胸倉掴まれて文句を言われてりゃそうもなります・・・
もう既に普通の世界ではありません・・・
テレアポの追い込みは更に厳しくなる
それでもアポが取れない社員は取れません。
残念ながらテレアポの世界には向き不向きというものがあります・・・
声の大きさや、トーン、間合いなどアポイントがうまい人はこのバランスが優れているのです。
アポが取れない社員は、立ちアポに加え、電話の受話器をガムテープで手にぐるぐる巻きにされてしまいます。
お昼ごはん?もちろんありません。
晩ごはん?そんなものもちろん摂ることが許されるはずがありません。
そして、最終的には社員への嫌がらせでしかありませんが、電話が終わるのは23時とか、0時とかです。
その間にどれだけ罵声やマネージャの灰皿が飛んでくるか分かりません。
私も一回マネージャーが他の社員に投げた灰皿が当たりそうになって、キレそうになったことがあります・・・
夜は20時以降は電話が掛かってきたお客様はいつも以上にお怒りになります。
そんなお客様と電話越しでケンカをする社員もいます。(他の部署でしたが)
そのくらいの気概があった方がいいと社内では称賛される始末で、私は本当に入社した翌日からいつ辞めてやろうかと虎視眈々と時期を伺っていました。
ここまでの内容だけでも完全にアウトな会社だという事がお分かりいただけると思います。
会社名を偽ってテレアポをする
当時は悪徳インターネット通販企業が多く存在しており、弊社はその中では大手であったこともあり、悪い意味で有名になっていました。
知名度が(悪い意味で)上がるにつれ、営業電話もやりにくくなります。
そこで夜の時間帯は、ウソの会社名を語りアポイントを獲得していくのです。
実際営業に行くと会社名が違うじゃないかとご指摘を頂くのですが、そこはうまくごまかさないといけませんでした。
アポイントのお電話をした者は、弊社のグループ会社のものでして・・・
こんな会社からサービスなんて買いたくないですよね。
実際の営業手法はまともだったのか?
テレアポはメチャクチャでしたが、実際の営業となるとお客様先に訪問して営業することになります。
他の人の営業手法はともかく、私は良心の呵責を最小限にしたい気持ちから至極真っ当に営業活動していたと思います。
リース契約で途中解約ができないことや、契約したからと言ってすぐに売上げが上がるものではないことなど、耳障りのよくない注意事項もしっかりと伝えて契約をしていました。
お陰で奇跡的に大きなクレームはほとんどありませんでした。
他の人は違いましたが、この記事では割愛します
契約形態はリース契約でしたので、契約に際してはリース会社の与信審査をパスしないと正式契約ができません。
当時は、この与信審査の紙を記入してもらうところまでを初回営業訪問で決めてくるのがノルマでした。
与信審査が通ったから、そのまま本契約してくれるお客様ばかりではないのですが、与信審査の紙まで記入してもらった時点で社内では『仮受注』扱いとなります。
その時点で数字としてカウントされてしまうので、営業マンは何が何でも審査通過後はそのまま本契約に持っていかないといけません。
よくできたプレッシャーです。
もう10年以上前の話なので時効とみなして話をしますが、当時はこの与信審査の紙を偽造することが横行しており、会社にはたくさんのお客様の名字の印鑑が揃っていました・・・
そこまでやってもノルマ達成できなかったりするのですから、本当にひどい会社です。
ルール無用、できない社員に課せられる罰
ここまで書いてきて、かなり当時を思い出して苦しいのですが、人を人と思っていないような会社でした。
出来ない社員はとことんまで詰められ(←上司から追い込まれることの意)、精神的肉体的に追いやられていきました。
休日出勤は当たり前、休日こそ仕事中に昼食の休憩が許されますが、アポが取れない平日は四六時中立ちアポです。
営業活動で外勤メインの担当者でも、一件も受注が出来ない時(これをボウズといいます)はマネージャーから全員の前で詰められ、中には帰社することを許されないこともありました。
酷かったのは、全員の前で頭を丸刈りにされた社員もいました・・・
どうですか、こんな会社が世の中にあるなんて信じられますか?
ブラック企業を象徴する珍事件も色々あります
まだまだ書けることはたくさんあるのですが、私が在籍していた時に社内で起きたインパクトのある出来事をいくつか紹介したいと思います。
人のアポイントを盗み、出世する人
テレアポでアポが取れた顧客は、アポイント顧客票なるものがあり、ニーズや受注見込み度など電話でヒアリングした内容を記載し保存します。
深夜に会社に侵入して、その見込み票を盗んだり、後から同一顧客に自分で電話をし直して自分で営業に行って受注してくる、そんな人がいました。
その事実が発覚したのは、その本人が随分と出世した後でした。
もともと評判のよくない人でしたが、自分の目的の為ならなんだってやる。そういう人でしたし、会社も暗黙の了解をしていた気がします。
悪徳インターネットベンチャー企業では、このくらいの野心があってちょうどいい・・・
そう思われていたようです。
インサイダー取引で逮捕!!
こちらの方は創業当初からいたメンバーの方でしたが、上場を果たしてストックオプションで億万長者となり、夢のような生活を送っていると聞いていました。
しかし、欲望がとまらなかったのでしょう。
退職した後、インサイダー取引で捕まってニュースになっていました。
前科ありの人が同じ職場に・・・・
毎月中途入社が入ってきており、極めて人材流動性が高い会社でしたので人の出入りはあまり気にしていませんでした。
そんなある月に入社したAさんという男性がいました。
26歳くらいで私より年上でしたが、物腰も柔らかく仕事が中々できる人でした。久しぶりによい方が入社してきたなぁと思っていたのですが・・・
ある日の夕方、同僚のBさんがひっそりと私を呼ぶのです。
チキ(筆者)さん、ちょっと、ちょっと見て下さい!
タイヘンなことになりますよ!
おいおい、こりゃぁ・・・・・
同僚が見せてくれたのは、ヤフーニュースのある記事です。
そこにはAさんのフルネームが事件の記事とともに掲載されていました。
なんと、このAさん、1年ほど前に詐欺容疑で逮捕されてニュースになっていたのです。
そんな人がうちの会社で働いている・・・
まぁ弊社も詐欺会社と言われ相当に評判の悪い会社でしたが、まさか本物の詐欺集団で詐欺を働いていた人を社員として採用しているなんて・・・・
この事件はひっそりと社内に周り、いつの間にかそのAさんは会社を去っていました。
ちなみにAさんは本当に働きぶりもよく、そんな事件を起こした人なんて信じられない位に人当たりもよかったです。
当然弊社在籍時に問題は全くありませんでした。
で、本当に1,000万円稼げたのか?
結論から言うと、稼いでいる人はいました。
しかし、ごく一握りです。非常に少ないです。私は、稼げていません。
管理職として、24歳で年収420万円位だったとおもいます。
この会社は本当にお金がもらえないと単なる生き地獄でした。当時年上の部下を持っていた私は、多少のインセンティブを付けて上げるくらいしか部下にできることはないと思っていました。
ノルマも毎月右肩上がりで上がるため、どんなに優秀な人でもいつか達成が出来ない時がきます。
その時に会社の幹部候補になっていなければ、会社を去る人が多かったです。
わたしも、実績を積んで履歴書や職務経歴書にそれなりの事が書けるようになるまで働いて、まともな会社に転職することがいつしか目標になっており、約一年半程度で会社を去ることになりました。
実はこの会社、経営権から何もかもすっかり変わってしまいましたがまだ世の中に存在しています。
高額な報酬の裏には何かある・・・
転職サイトを見てみると、結構な確率で新規の営業系の求人などでこのような給与サンプルを見かけることがあります。
このような年収例は誇大表示ではないと思いますが、注意が必要です。
世の中そんなに簡単にお金を稼げる仕組みにはなっていません。
世間には色々な会社があるものですが、やはりしっかりとした採用活動を行っている会社の方がホワイト企業度は高いと思います。
社員を使い捨てのように考えている会社の行く末は自ずと分かります・・・
今回の私の例はかなり極端な経験だとは思いますが、こうした会社も(しかも上場までしている)存在しているということをご理解頂き、皆さまにはちゃんとした企業にお勤め頂けたらなと切に願います。
ということで、私の経験した超絶ブラック企業の実態でした
コメント